網膜の中心部を「黄斑」といいます。
黄斑には光を感じる細胞である視細胞が集まっており、見るために最も重要な部位です。
視細胞を栄養するために、黄斑部は血流が多く流れており、何らかの理由で血管が障害されるとむくみを生じ、視力が低下してきます。
黄斑部のむくみを起こす代表的な疾患に
などがあります。これらの疾患による黄斑部のむくみを放置すると徐々に視力が低下していくことが分かっています。
そのため、黄斑部をできるだけ正常に近い状態を保つことが重要です。
黄斑浮腫の治療は、抗VEGF薬という薬剤を眼の中に注入する治療(硝子体内注射)が第一選択になっています。
抗VEGF薬には組織のむくみを改善させる効果や、新生血管という悪い血管を小さくする効果があり、先に述べた疾患で視力が低下していくことを防ぐ効果が期待できます。
薬剤は比較的即効性が高いものですが、持続性がなく、ほとんどの症例では注射の効果が切れてきた時期に再度注射をする必要が出てきます。また、視力を改善する効果はそれほど期待できず、治療としては現在の視力を維持することが主な目的になります。そのため、できるだけ疾患早期に治療を開始していくのが望ましいと考えられています。
以前は臨床で使用できる抗VEGF薬は限られていましたが、最近では後発品も含め多数の薬剤が保険適応となっています。
一人ひとり病気の活動性や薬剤の効果が異なり、薬剤の種類や治療間隔をオーダーメイドで考えていく必要があります。
治療を行う上でのデメリットとして極めて稀ではありますが、感染症を起こす場合があります。また虚血性心疾患や脳梗塞といった疾患の発症にも関与が疑われています。しかし、最も大きな問題は薬剤の値段の高さです。
薬剤の種類によって金額が異なりますが、値段の高い薬剤を継続していく必要があるため、治療に際しては患者さんとよく相談をしてどのように治療計画を立てていく必要があります。
治療計画をどのように立てていくかが、医師としての腕の見せ所であると考えています。